TOP 徹底解説 理科年表FAQ 理科年表広場 理科年表プレミアム 質問箱
暦部 天文部 気象部 物理/化学部 地学部 生物部 環境部 その他
トップ  > 理科年表FAQ > 天文部 > 宇宙はこれからどうなるのですか?
  宇宙はこれからどうなるのですか?

理科年表 平成29年版
大正14年創刊以来の伝統・歴史とともに、記述の正確性にも定評がある科学データブックの最新版です。理科年表オフィシャルサイト探索のお供に、ぜひともご活用ください。また、本書のご購入により、オフィシャルサイト内「理科年表広場」へのアクセスが無料となります。
☆ハンディタイプの「ポケット版」と、大きな活字の「机上版」の2種類がございます。(内容は同一です。)
◆ポケット版 A6判
定価1,400円
+税
◆机上版 A5判
定価2,800円
+税

 宇宙の将来は宇宙の膨張が今後どのようになるかで決定されます。宇宙の構成要素として大きくわけると、元素などの物質、ダークマター、そしてダークエネルギーがあります。WMAP ( Wilkinson Microwave Anisotropy Probe : ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機 ) をはじめとする最新の観測結果からはそれぞれ 4 %、22 %、74 %の割合で存在していることが明らかになっています。物質とダークマターは重力で互いに引き合うために膨張に対してブレーキとして作用します。一方、ダークエネルギーは反発力としてはたらくことが知られています。しかしながらダークエネルギーの性質についてはまだ謎が多いため、ダークエネルギーの性質によって、宇宙の将来についていくつかのシナリオが考えられます。

図 1  WMAP による宇宙マイクロ波背景放射の観測結果から導き出された元素 ( ベージュ )、ダークマター ( 緑 )、ダークエネルギー ( 青 ) の存在比を示したグラフです。ダークエネルギーが宇宙の大部分を占めていることがわかります。
( http://map.gsfc.nasa.gov/m_mm.html より転載 )

 

 ダークエネルギーは以前は宇宙定数と呼ばれていて、アインシュタインが宇宙膨張のない静的な宇宙を成り立たせるために、時間によらない定数として導入したのがはじまりです。もともとは宇宙膨張を止めるために導入されたのですが、現在では、観測されている宇宙の加速度的な膨張や宇宙マイクロ波背景放射の性質を説明するために必要とされています。ダークエネルギーが将来に渡って時間的に変化せず定数である場合には、宇宙膨張は速度をだんだんはやめながら永久に膨張しつづけます。宇宙膨張が非常に早くなって次第に近くにある銀河も光速を超えて遠ざかるようになるため、私たちからは見えなくなってしまいます。私たちの住む銀河系は極めて近くにある重力的に結びついた銀河とともに孤立してしまうでしょう。その銀河では、新しい星を作る材料であるガスが使い尽くされてしまうためにもはや新しい星は誕生せず、残っている星々もやがて寿命を迎え、ブラックホールや中性子星、白色矮星などの星の残骸のみが残った状態になると考えられます。

 ダークエネルギーがもたらす反発力が弱くなったり、なくなってしまったり、急に引力を及ぼすようになったりする、という理論モデルも存在します。この場合、ダークエネルギーの反発力が弱くなることによって、元素などの物質やダークマターの重力が及ぼすブレーキの効果が強くなってきます。すると膨張は次第に減速し、やがて膨張が止まってしまいます。さらに宇宙はそこから収縮をはじめてしまうことになります。最終的には宇宙はビッグバンのときのように非常に小さくなり崩壊してしまうでしょう。このような宇宙の崩壊のシナリオを「ビッグクランチ *1」といいます。

  最後に、ダークエネルギーのもたらす反発力の影響がさらに強くなる場合が考えられます。この、時間とともに影響が強くなるダークエネルギーは「ファントム・ダークエネルギー」として理論的に提唱されています。反発力が強くなるので宇宙はさらに加速度的に膨張します。あまりに膨張のスピードが速いために、それまで宇宙膨張から切り離されて重力で束縛されていた銀河などの構造が崩壊してしまいます。さらに時間が経って膨張が速くなると星も原子に分解され、最終的には宇宙膨張が強い力による束縛力にも打ち勝ってしまい、物質の最小構成要素である素粒子にまで分解されてしまうと考えられています。このシナリオは「ビッグリップ*2」と呼ばれています。

  これらの宇宙の終末に関するシナリオは理論的に可能なものであり、ダークマターの性質についての観測的な検証の試みは、現在非常に活発な研究分野のひとつになっています。将来の大規模ダークエネルギーサーベイの結果が待たれています。

【小野寺仁人 韓国・延世大学(2008年 4月)】

 

図 2 宇宙の大きさがどのように進化するかを表した図です。横軸に時間で左端がビッグバンになっていて、時間が経過するにつれて右に進みます。「 PRESENT 」が現在の宇宙を表しています。一方縦軸はそれぞれの時刻に対応した宇宙の大きさを表しています。曲線はそれぞれ、ダークエネルギーが時間的に一定である場合の宇宙がオレンジ、ビッグクランチに向かう宇宙が黄色、ビッグリップに向かう宇宙が灰色で表してあります。ビッグバンからしばらくの間、宇宙は減速 ( DECELERATION ) しつつ膨張し、あるところで加速的膨張 ( ACCELERATION ) に転じています。現在は加速度的膨張に転じた少しあとということになります。
( http://chandra.harvard.edu/photo/2004/darkenergy/more.html より転載。著作権は Credit: NASA/CXC/M.Weiss に帰属 )

 

*1 クランチ ( crunch ) とは「バリバリと砕く、破壊する」という意味です。「ビッグクランチ」では、砕かれ、つぶれてしまう宇宙の姿がイメージされます。

*2 リップ ( rip ) とは「引き裂く」という意味です。「ビッグリップ」では、引き裂かれている宇宙が想起されます。