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  3つの準惑星の素顔
天文部 「準惑星」より
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 チェコのプラハで 2006 年夏に開催された国際天文学連合・総会において、惑星の定義が制定された 理科年表・平成 19 年版『暦』の『惑星の定義』参照 )。同時に太陽系内天体の新しいカテゴリーとして『準惑星』が設けられ、現在は Ceres、冥王星、 Eris の 3 天体が該当する。平成 19 年版の理科年表では『 trans-neptunian object 』と英語名のまま、仮の体裁で情報がまとめられており、平成 20 年版からは日本語訳の『準惑星』となって軌道要素、物理的諸量および衛星のデータが掲載されている。

 Ceres は、イタリアのピアッツィ G. Piazziがシシリー島のパレルモ天文台で恒星を観測していた 1801 年 1 月 1 日、偶然に発見した。ティティウス・ボーデの法則により予想される位置に Ceres は見つかったが、直径は 910 km と当時知られていた天王星までの惑星と比べて非常に小さい。その上、翌年の 1802 年には Pallas、 1804 年には Juno、 1807 年には Vesta と、 Ceres と同じような火星と木星の軌道の間にある小惑星が見つかりだしたことから 理科年表『小惑星』を参照 )、惑星ではなく小惑星と呼ばれる。それぞれの小惑星番号は Ceres が 1、 Pallasが 2、 Junoが 3、 Vesta が 4 となった。 2007 年 4 月 10 日までに、小惑星番号が与えられた小惑星は 16 万個あまりに上る。

図 1 ハッブル宇宙望遠鏡による Ceres
( http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2005/27/image/d/
より転載 )

 

 冥王星は、新惑星を探していたアメリカ・ローウェル天文台のトンボー C. Tombaughが、 1930 年 1 月 21 日、 23 日、 29 日に撮像した写真乾板から発見した。当初より注目されていたのは、離心率 0.249と軌道傾斜角17.1 度が大きい点である。その後、 1978 年になって衛星 Charon が見つかると、質量は地球のわずか 0.0023 倍しかないことがわかった。現在知られている直径は 2,390 km であり、地球の月をはじめ、木星の Galileo 衛星Io、 Europa、 Ganymede、 Callisto )、土星の衛星 Titan、海王星の衛星 Triton よりも小さい。このように、他の惑星と比べて軌道や大きさに違いが見られるものの、惑星の定義がなかったため、 76 年にわたり第 9 番惑星の座を占めていた。準惑星に分類されたことを受けて、冥王星には小惑星番号 134340 が与えられている。また、冥王星は海王星と 2 : 3 の平均運動共鳴の関係にあって、両者はお互いに接近することはない。

図 2 ケック望遠鏡による冥王星最も明るい点 と衛星の Charon冥王星の右の点 )、 Nix上部左側の点 )、 Hydra上部右側の点 )。
( http://www.ifa.hawaii.edu/
info/press-releases/PlutoPictures/ Pluto-Tholen-10-07.html
より転載 )

 

 アメリカのブラウン M. Brownが 2003 年 10 月 21 日にパロマー天文台の CCD カメラで撮像したデータから見つけた天体が Eris である。発見を発表した 2005 年当初は、 2003 UB313 という仮符号がつけられ、太陽系外縁天体に分類されていた。明るさから見積もられた直径は 3,000 km ほどで、冥王星よりも大きいことから「第十番惑星の発見」と騒がれた。その後の観測から、直径は 2,400 km であることが明らかになったが、それでも直径 2,390 km の冥王星より大きい。 Eris の発見は、惑星の定義を制定する大きな動機となったといえる。なお、 Eris の小惑星番号は 136199 である。

図 3 Eris を発見した 2003 年 10 月 21 日の画像。 それぞれ 1 時間半の時間を空けて撮影。
( http://www.gps.caltech.edu/~mbrown/planetlila/ より転載 )

 

 このように、小惑星であった Ceres、惑星であった冥王星、太陽系外縁天体であった Eris は、定義によって 2006 年以降は準惑星に分類されることになった。もともとは違った天体に分類されていたため、軌道の大きさやサイズに違いが見られるが、定義にある物理的特性をもってすれば同一グループに分けられる。この先、準惑星の定義に該当する天体が見つかった場合は、国際天文学連合が制定する手続きによって数が増える可能性がある。

 アメリカの NASA は、冥王星に向けて宇宙探査機ニュー・ホライゾンズ New Horizonsを 2005 年 1 月打ち上げた。その当時、冥王星は惑星に分類されており、探査機が未踏でかつ最遠の惑星への訪問という意味で注目された。 2015 年 7 月に冥王星へ接近、その後はさらに遠方に広がる太陽系外縁天体へ向かう計画である。探査可能な外縁天体探しには、日本のすばる望遠鏡も協力している。冥王星が準惑星に分類されたいまも、接近した探査機による調査によって得られる情報に大きな期待がかかる。

 一方、 NASA は 2007 年 9 月に Ceres と小惑星の Pallas を探査する宇宙探査機ドーン Dawnを打ち上げた。 Pallas へは 2011 年 8 月に到着、 2012 年 5 月に離脱し、その後 Ceres に 2015 年 2 月到着して、 2015 年 7 月までミッションは続く。同じ観測装置による Ceres と Pallas の比較に加え、ほぼ同時期に得られる冥王星の情報も合わせることで、我々の準惑星や太陽系小天体に関する知見は大きく飛躍するであろう。

【布施哲治 国立天文台・ハワイ観測所(2008年 4月)】

 

【 参考文献 】
(1) 「ニュー・ホライゾンズ」ミッションのホームページ
   http://pluto.jhuapl.edu/index.php
(2) 「ドーン」ミッションのホームページ
   http://dawn.jpl.nasa.gov/
(3) M. Brown のホームページ
   http://www.gps.caltech.edu/~mbrown/planetlila/
(4) 渡部潤一、布施哲治『太陽系の果てを探る』東京大学出版会