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固体や液体のような凝縮系では、それらを構成する原子や分子は、互いに強い力で結ばれている。原子・分子相互間に引力があるが、どの方向からも同じ強さの力が働いているため、均衡がとれている。ところが物体の表面
(液体では液面 )にある原子 ・ 分子については話が違う。物体の内部にばかり引かれることになる。固体では、この程度の力によって形態が変わることはないが、液体の自由表面ではこの力のため、表面積をなるべく小さくしようとする。この
2 次元内の力が表面張力である。
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水の表面張力
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液体分子相互間には引力、すなわちマイナスの位置エネルギーがあるが、表面分子にはその一部が欠けている。したがって内部分子よりエネルギーが高く、そのエネルギーの
(正確には自由エネルギーの)単位面積当たりの量
erg・cm-2 = dyn・cm-1
が表面張力になるが、式からわかるように、表面という
2 次元の面を考え、その面内に作用する単位長さ当たりの力と見なしてもいい。習慣的に
MKS でなく、 CGS 単位を用いて、 dyn・cm-1
で表されている。
容器に一杯満たした水が、やや盛り上がるのは表面張力のためである。蓮の葉に落ちた水滴が、球状になるのも、水に表面張力があるせいである。しかし、これらの現象は、容器と水、葉と水との間の性質にも関係する。水は葉に対して「乾き」の性質があるため
(乾きのことを正しくは接触角が鈍角という )、水は葉との接触面を小さくしようとする。そうして水自身は、自分の持つ表面張力という性質のためにまるくなる。
ガラスと水との接触角は鋭触、つまり水はガラスに対しては「濡れ」の関係にある。だから中空のガラス管を水中に入れれば、水は管の中を昇る。
水銀の表面張力はきわめて大きいが(20 ℃ で
482.1)ガラスとは乾きの関係にある。だから中空ガラス棒を水銀中に突込めば、管中の液面はぐっと下がる。しかし、水銀の密度が大きいため、つまり水銀は重いから、下がりの目盛りもそれほどには大きくならない。とにかく管中で液体が上がるのも下がるのも、その表面張力が大きく影響し、「濡れ」(液体と容器との付着力大
)なら上がり、「乾き」(付着力が液体の凝集力より小
)なら押し下げられる。
一般に表面張力は温度上昇とともに減少する。表には
−5 ℃ や 120 ℃ の水の値が挙げられているが、これは大きな圧力をかけて
H2O を液体状態に保って測定した値になっている。
常温で液相をなすのは多くは有機物質であるが、表面張力の値は 20 〜 40 程度と小さい。アンモニア水
(59.3)や硫酸(55.1)も水には及ばない。
しかし、金属では原子間引力が大きいため、表面張力も大きくなる。水銀以外は高温にしなければ金属液体はできないが、金
(1120)や鉄(1720)はたとえ液化しても、原子同士はいわゆる金属結合というメカニズムのため、ガッチリと結び付いていることが推測される。
【理科年表編集委員会(2006年11月)】
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固体と液体の接触点において |
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次のヤングの式が成立する。
γS
= γSL +
η cos θ
ここで
γS
: 固体の表面張力 γSL : 固-液界面張力
γL
: 液体の表面張力 θ : 接触角
である。
1. 拡張ぬれ(spreading wetting )
θ = 0° の場合で液滴が薄膜状にどこまでも拡がってゆく。
2. 浸漬ぬれ(immersional wetting
)
0 < θ ≦ 90° の場合で、固体を液中に浸漬したときのぬれ。
3. 付着ぬれ (adhesional wetting )
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90 ° <
θ ≦ 180 ° の場合で、里芋の葉に朝露が乗っているような状態。付着ぬれとはいっているが、ぬれないといってもよい。 |
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