2000 年に産声を上げた「循環型社会形成推進基本法
(略称、循環基本法)」には、廃棄物対策を考えるにあたって、発生抑制、再使用、再生利用、熱回収、適正処分の順に優先するといった基本的考え方が盛り込まれています。その実質的な方向を規定した「循環型社会形成推進基本計画
(略称、循環基本計画)」では、具体的な目標指標を定めています。「資源生産性」、「循環利用率」、「最終処分量」で、それぞれを社会における経済活動の入口、循環、出口の指標とし、目標値を定め、将来検証しようとしているのです
(図 1 、および理科年表平成 18 年「国レベルの物質収支
(資源生産性、循環利用率、最終処分量) 」 983
頁参照 )。
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図 1 循環基本計画のためのマテリアルフロー指標と数値目標
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「資源生産性」は、天然資源等投入量あたりの国内総生産(GDP)と定義し、 2000 年の約
28 万円/トンから 2010 年に約 39 万円/トンとすることを目標としています。
2003 年では約 32 万円/トンの実績となっています。産業や人々の生活がいかに物を有効利用しているかを総合的に表わす指標ですが、リサイクルや廃棄物発生が経済活動と密接不可分であることから、ものの流れの入口である資源利用と経済指標を結合させた指標の意義は大きいといえます。「循環利用率」は天然資源等投入量と循環利用量の合計に対する循環利用量の割合として定義されていますが、同期間で約
10 % から 14 % に上昇させることとしており、
2003 年の「循環利用率」実績は 11.2 % です。「最終処分量
」は年間 5600 万トンから 2800 万トンに半減することが目標で、
2003 年では 3890 万トンとなっています。この「最終処分量
」は、バブル経済といわれた 1990 年前後には 1 億トンを超えていましたので、その時期からみれば、すでに
3 分の 1 程度に減っていることになります。
これらの目標に向けてのさまざまな取り組みを見守る必要はありますが、まずはこうした指標の概念を国として用いることの意義を大切にしたいと思います。廃棄物問題を契機としてはじまった循環型社会構築を目指した議論が、資源利用の効率性をめざし、この流れを経済の指標と結びつけているわけです。そして、さまざまなリサイクル法とともに、こうした指標や循環基本計画の評価
・ 検討が年次計画として明確に示されていることは重要です。循環基本計画自体に対して、「内外の社会経済の変化に柔軟かつ適切に対応して、循環基本計画の見直しを行なうこととし、見直しの時期は、
5 年後程度を目途とする」としています。循環型社会形成となれば、従来とは異なるものの流れが生まれるわけです。その流れが好ましいものかどうかを判断し、新たに効率的な資源利用の流れやリサイクルを育てていくべき時期に、こうした見直しを行ないながら育てていくことは極めて重要で、この作業を基本計画に盛り込んだことは高い見識であったといえます。
【酒井伸一 京都大学環境保全センター(2006年11月)】
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