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  東京三鷹で見える掩蔽
暦部
「東京三鷹で見える掩蔽(1)」より
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理科年表 2022

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 月が星空の間を動いている途中で、背後の星を隠す現象を起こすことがある。この現象を掩蔽 えんぺいという。


  「掩蔽」というのは一般にはもっと広く、惑星が恒星や衛星を隠したりする現象をも含めるが、それらは通常、望遠鏡を使っても一般の人には観測が困難なため、理科年表で紹介している掩蔽は、最初に述べた月による掩蔽である。月が太陽を隠す現象を「日食」というのにならって、月による掩蔽を「星食」ということもある。


  星は夜空にたくさん見えるので、掩蔽は絶えず起こっていると思われがちだが、実際には、月齢によっても少し違うが、ある程度以上暗い星は月に近づくと月の明るさに負けてしまって、望遠鏡を使っても見えなくなってしまうので、観測できる掩蔽は数が限られる。理科年表で紹介している掩蔽は小望遠鏡で観測できる現象の内のおもなものである。


図 1 2007 年 5 月 27 日 ψ Vir の掩蔽

  掩蔽が起こる時刻は見る場所によって異なる。例として図 1 に 2007 年 5 月 27 日の 4.8 等星おとめ座 ψ ( ψ Vir ) の掩蔽のおもな都市における状況を示す。起こる時刻が場所によって異なる理由は、隠される星から地球を見たときの様子を考えるとわかりやすい。


図 2 2007 年 5 月 27 日  ψ Vir 掩蔽時の月の影
東京での恒星の潜入時における月の影の位置と移動方向を示す。恒星から見た地球と月の位置関係を示したものである。

 図 2 は上記の掩蔽について東京で潜入するときに、隠される星から見た地球と月の位置関係を示したもので、このとき、仙台でもほぼ同時に潜入しているが、札幌 ・ 京都 ・ 福岡 ・ 那覇などではすでに潜入してしまっていることがわかる。矢印は 20 分間の月の中心の動きである。この月の動きを知れば、他の地点で掩蔽が起こるおよその時刻を知ることもできる。ただし、その際、時間が経つと月が移動するだけでなく、地球上の地点も地球の自転にしたがって移動することを考慮する必要がある。


図 3  2007 年 5 月 27 日  ψ Vir の掩蔽の潜入時刻

 図 3 はそれらを考慮して、日本各地における上記の掩蔽の起こる時刻を読み取れるように作図したものである。


  すべての現象について、このような図を示すスペースはないので、理科年表では東京三鷹における予報時刻と、他の地点の概略予報時刻を求めるための係数 a と b を載せている。計算式は、観測地点の経度と緯度をそれぞれλと φ東経と北緯を正とし、角度の度を単位に表わす として三鷹の時刻+ a ( λ − 139°.54 ) + b ( φ − 35°.67 ) である。ただし、この式は経度と緯度の第 1 次微分係数のみを使った略算式なので、求められる予報時刻の誤差は三鷹から離れるほど大きくなることに注意し、あくまでも目安として使われたい。 a 、 b の値が与えられていないのは掩蔽が見られる限界線に近いために、このような略算式では他の地点の予報時刻を求めることができないことを示している。


  掩蔽には潜入と出現があるが、観測しやすいのは、月の暗縁側で起こるもので、通常は満月前は潜入が、満月後は出現が観測の対象になる。潜入の観測では、予報時刻の直前に月のすぐ東側にある星を見つけ、それが月縁に隠されるまで追いかければよい。出現の観測では出現する場所を知っておく必要がある。そのために予報表には現象点の位置角 P の値も与えてある。ただし、 図 1 からわかるように、これも場所によって異なることに注意してほしい。

【相馬 充 国立天文台光赤外研究部(2006年11月)】