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生物部
「T細胞と抗原提示細胞との相互作用における作用分子」より
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T細胞は一部を除き抗原単独には反応できない。
MHC分子(同種移植において拒絶反応の主要な対象となる細胞表面の抗原、ヒトでは HLA)に当の抗原断片が結合した型のものに抗原レセプターで反応する。
MHC分子にはクラス I とクラス II とがあり、クラス
I はほとんどすべての組織の有核細胞が表出しているが、クラス
II は樹状細胞・マクロファージ ・ B細胞など一部の種類の細胞しか表出していない。
CD8+T細胞はクラス I、CD4+T細胞はクラス
II を使用する。B細胞の抗体産生を助けたり、CD8+T細胞の反応を助けたり、マクロファージを活性化したりするのは
CD4+T細胞なので、CD4+T細胞の作用が重要である。CD4+T細胞が反応するには樹状細胞などが抗原を取込み適当な大きさに処理し
MHCクラス II に結合させて表出する必要がある。そうした働きをする樹状細胞などを抗原提示細胞という。T細胞は抗原レセプターで相手に反応したというだけでは活性化されず、他の表面分子に抗原提示細胞上の分子が結合したり、抗原提示細胞が産生するサイトカインの作用をうけたりする共刺激を必要とする。最初の反応では
T細胞上の CD28分子と抗原提示細胞上の CD80/CD86分子との結合が重要である。このとき作用するサイトカインにより誘導されるT細胞に違いが生じる。IL-12
は Th1細胞を、 IL-4 は Th2細胞を、IL-10 は Tr1細胞を、TGF-β・IL-10
は Th3細胞を、マウスではIL-6・TGF-β 、ヒトでは
IL-1、IL-6、IL-23 は Th17細胞を誘導する。したがって抗原提示細胞が有効に働くには、CD80
などの共刺激分子を十分に表出していること、サイトカインを産生できることが必要である。T細胞からの作用により抗原提示細胞が活性化されるという相互作用も存在する
(T細胞からのインターフェロンγ、CD154分子の
CD40分子への結合など )。
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図 T細胞と抗原提示細胞との相互作用における作用分子
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【矢田純一 東京医科歯科大学名誉教授(2008年 3月)】
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