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  彗星の成因と太陽系の起源について
天文部 「彗星の物理的諸量」より
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理科年表 2022

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  太陽系内を運動する小天体のうち、難揮発性の塵と揮発性の氷からなる「核」からガスや塵の放出現象が確認されているものを彗星と称する。直径数 km から数 10 km 程度の彗星核から放出されるガスや塵が、 100 万 km 以上ものスケールを持つ「コマ」や「尾」を構成する。なお、彗星の中には、非常に少数ではあるが塵の尾だけが観測されるものもある。それらは、岩石質の小惑星同士の衝突によって、破片を大量に撒き散らしたことが原因とも考えられている。

 彗星の核に含まれる氷は水 H2Oが主成分であり、水が氷の 80 % 程度を占めている。その他には、一酸化炭素 CO) や二酸化炭素CO2 ) をはじめ、シアン化水素HCN、アンモニア NH3、メタン CH4、アセチレン C2H2 )、エタンC2H6 、メタノールCH3OH 、ホルムアルデヒドH2CO などさまざまな分子が彗星氷中に含まれている。彗星氷の成分比は、おおむね星間空間で観測されている氷の成分と似ていることが特徴である。一方、難揮発性物質としては、おもにケイ酸塩鉱物や炭素質の塵が多く含まれていると考えられる。これら氷と塵が、質量比にして同程度含まれている。ただし、彗星ごとに、これらの成分比にばらつきがあることがわかっている。


図 1  彗星の核NASA/Deep Impact 探査機が撮った 9P/Tempel 彗星の核 )

http://www.nasa.gov/mission_pages/deepimpact/
multimedia/PIA02127.html


  彗星核は、太陽系誕生の初期に形成されたものであると考えられている。太陽系は、約 46 億年前に、低温のガスと固体微粒子難揮発性の塵や氷を含む からなる分子雲から誕生した。分子雲に含まれていたガスや固体微粒子は、原始太陽の周囲に「原始太陽系星雲」と呼ばれる円盤を形成するが、その円盤中で固体微粒子が集まってできたキロメートル ・ サイズの塊を「微惑星」と呼ぶ。原始太陽に近い領域ではおもに難揮発性の塵からなる微惑星が、比較的遠方では H2O 等の氷を含む微惑星ができたと考えられる。微惑星は次第に合体衝突を繰り返しながら大きく成長し、最終的には惑星が形成されるが、その際、すべての微惑星が惑星になったわけではない。とくに木星、土星、天王星、海王星といった巨大な惑星が誕生した領域では、それら巨大惑星の重力の影響で、太陽から非常に遠方に至る軌道へと軌道が変わってしまった微惑星が多数存在したと考えられる。そうした微惑星は、現在も太陽系の外縁部に残存しており、太陽から 1 万 〜 10 万天文単位も離れた場所に太陽を取り囲むように分布していると想像されている オールトの雲 )。また、海王星軌道よりもさらに外側にあった微惑星は、その軌道が大きく変化せずに現在に至ったと考えられ、事実、海王星軌道より遠方にはエッジワース ・ カイパーベルトと呼ばれる多数の小天体の群れが見つかっている。エッジワース・カイパーベルトにある天体は、地球や他の惑星が太陽を回る面とほぼ同じ面内で、太陽の周りを回っている。これらオールトの雲とエッジワース ・ カイパーベルトは、現在観測されている彗星の供給源と考えられ、彗星が形成された領域は木星軌道付近から海王星軌道以遠までと広範囲にわたっていた可能性が高い。このことが、彗星の氷や塵の成分比等にばらつきが生じた原因ではないかと考えられる。以上のように、彗星は太陽系形成初期の情報を保持した始原天体であり、太陽系の起源を考えるうえで重要な天体なのである。

【河北秀世 京都産業大学(2006年11月)】


図 2  可視光領域における彗星の典型的なスペクトル 西はりま天文台なゆた望遠鏡による : 森淳、勘田裕一 )。彗星は、可視光領域では、塵が反射した太陽光とガスが発する輝線によって輝いている。可視光領域で光を発するガスは、原子が 2 つあるいは 3 つからなる単純な分子がほとんどであるが、赤外線や電波領域では更に複雑な分子が輝線を発している。こうしたスペクトルから、彗星の氷の組成を調べることができる。