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  代表的なX線源 (I) 銀河団と楕円銀河
 
天文部 「代表的なX線源」より
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理科年表 2022

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 銀河団とは、銀河が集まっただけのものではありません。図 1 はかみのけ座銀河団の X 線と可視光の画像です。銀河団全体から X 線が放射されています。実は、銀河と銀河の間は真空ではなく、数千万度から 1 億度にもおよぶひじょうに高温のガスで満ちていて、 X 線を放射しています。驚くべきことに、ガスの質量は銀河の質量の数倍にもなります。このガスを銀河団ガスと呼びます。銀河団ガスのほとんどは、一度も星にも銀河にもなったことのない宇宙のはじまりの時そのままの原始ガスと考えられています。このガスを閉じ込めるためには、銀河団の質量は、銀河とガスをあわせた質量よりもずっと大きくなければなりません。宇宙の物質のほとんどは、暗黒物質と呼ばれる未知の物質です。そして、暗黒物質が特に集中しているところが銀河団なのです。


図 1 ( 左 かみのけ座銀河団の X 線画像

http://heasarc.gsfc.nasa.gov/
かみのけ座銀河団の可視光画像
http://skyview.gsfc.nasa.gov/

 銀河団ガスには、酸素や硅素、鉄などの元素が大量に含まれています。ガス中のこれらの元素の質量は銀河の星に含まれる元素の質量に匹敵します。図 2 は、日本の 5 番目の X 線天文衛星「すざく」によって観測されたろ座銀河団の X 線スペクトルです。酸素やマグネシウム、硅素、硫黄、鉄などの元素特有の構造 ( 輝線 ) がくっきりと検出されています。これらの元素は、銀河の中で超新星爆発によって合成されます。銀河団では、このように合成された元素の数割が、新たに生まれる星にとりこまれるのでもなく、銀河内に星間ガスとしてとどまるのでもなく、銀河の重力ポテンシャルから、銀河間空間へと脱出したことになります。図 2 で cD 銀河周辺領域では、銀河団ガスよりも輝線強度が強いのは、現在もこの銀河から銀河団に元素が供給されていることを意味します。


図 2 日本の X 線天文衛星「すざく」で観測されたろ座銀河団の X 線スペクトル検出器が受けた X 線光子数のエネルギー分布 。黒は銀河団中心にある cD 銀河周辺、青は銀河団ガス 日本天文学会天文月報 99 巻 6 号


 図 3 は、もっとも X 線で明るい楕円銀河の 1 つ、 NGC 4636 です。銀河全体から X 線が放射されているのがわかります。楕円銀河では、渦状銀河と違って、冷たい星間ガスはほとんど存在しません。そのかわりに、数百万度の高温ガスが星間空間を満たしており、 X 線を放射しています。このガスは、太陽のような恒星の外層が白色矮星になる前に放出され、恒星の運動によって加熱されたものです。楕円銀河でも、ガスを閉じ込めておくためには、暗黒物質が必要です。楕円銀河は銀河団よりもずっと小さいため、ガスの温度は銀河団よりは低くなっています。銀河団では、銀河の多くは楕円銀河や S0 銀河です。これらの銀河が、銀河団ガスの元素の起源となっています。

【松下恭子 東京理科大学(2006年11月)】


図 3 楕円銀河 NGC4636 の X 線画像
http://heasarc.gsfc.nasa.gov/ )と
可視光画像 ( http://skyview.gsfc.nasa.gov/