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  星間分子雲
天文部 「星間分子雲」より
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 星と星の間には、ガスや宇宙塵で成る星間物質 星間雲が存在し、その温度や密度によって、星間ガスは異なる形態を保っている 理科年表天第 16 図 )。星間ガスの主成分は水素であり、星からの光があたると、その遠紫外線成分によって水素分子は水素原子に解離される。しかし、星間物質の中でも、低温で、星間ガスや宇宙塵が他より濃く集まっている領域は、星の光が内部まで届かず、ガスが分子として存在している。一酸化炭素、アンモニアや水といった他の元素も分子で存在しているため、このような密度の高い星間雲は「分子雲」と呼ばれている。このような領域は、星間分子雲に含まれる塵やガスによって背景の星や銀河などの光が吸収され、可視光から近赤外線域で見てみるとあたかも黒い雲のように見えるため、「暗黒星雲」とも呼ばれている ( 図 1 天の川の暗黒星雲の分布、 図 2 パイプ星雲 )。

図 1 私達の銀河系の銀河面。赤や白い領域は、多くの星が輝いて見えているところ。黒く広がっている成分は、背景の星や銀河などの光が、視線上の星間分子雲中のガスや塵に吸収され、あたかも黒い雲のように見えている領域。 東京学芸大学 暗黒星雲博物館 )

 星間分子雲中の水素分子に対する地上からの直接検出は難しく、比較的観測しやすい一酸化炭素分子などから電波帯域で放射される特徴的なスペクトル線を検出することによって、分子雲の性質を調べる手法がとられている。そして、 L183 ( L134N ) のように比較的孤立した分子雲や、おうし座分子雲のように群れとして存在している分子雲が観測され、サイズも、「グロビュール」と呼ばれるさしわたしが 1 光年を下回る小さいものから、数 〜 数 100 光年程度のひろがりをもつものまで様々であることが知られている。質量も、太陽の 100 倍程度のものから、「巨大分子雲」と呼ばれる太陽の 10 万倍に達するものがあり、多様な分子雲が存在しているのである。近年では、我々の銀河系内のみならず、大小マゼラン雲をはじめとする近傍銀河内の分子雲探査や、遠方銀河内の分子雲の検出も行われており、異なる環境下での分子雲の性質が調べられてきている。

 分子雲の平均的な密度は、 1 立方センチメートルあたり 1000 個程度で、温度は絶対温度で約 10 K である。これらの星間分子雲は、自身の重力によって収縮していき、密度が 1 万個 cm-3、 10 万個 cm-3 と高まり、「分子雲コア」と呼ばれる高密度領域を形成していく。そして、これらの分子雲コアの密度がさらに高まることにより、中心部で「原始星」が形成され、ついには核融合が始まり恒星が生み出されるのである。図 3 は、約 450 光年の距離にあるおうし座分子雲を可視光と電波でみた図である。おうし座分子雲では、太陽と同じ程度の質量をもつ星が 100 個程度形成されつつある。


図 2 約 500 光年の距離にあるパイプ星雲。上図は、可視光でみた星雲のイメージに、名古屋大学なんてん電波望遠鏡でとらえた一酸化炭素分子から放射される電波 約 115 GHzの強度分布を等高線で重ねたもの。本イメージは白黒反転されており黒く見えるところが可視光で明るく輝いている領域を示している。下図は、一酸化炭素分子から放射される電波強度図を疑似カラーで示したもの。


 うまれた恒星が O、 B 型星のように重く明るい星の場合は、星からの紫外線によって水素ガスが電離され、光り輝く雲のような様態を見せる。このような星雲を散光星雲または HII 領域と呼ぶ。このため、散光星雲と暗黒星雲はしばしば隣接して存在する。散光星雲は非常に高温であるため、周囲の星間分子雲を押しのけながら膨張していく。この過程で周囲の星間分子雲でも連鎖的に恒星が形成されていく。このようにして若い恒星の集団である散開星団や OB アソシエーションが誕生する。図 4 は、重い星も含んだ活発な星形成領域であるオリオン座分子雲である。散光星雲を輝かせるような大質量星は最終的に超新星爆発によって一生を終え、その際の衝撃波によって星間分子雲は吹き飛ばされて拡散し、再び元の星間ガスへと戻っていくのである。


図 3 距離が約 450 光年のおうし座分子雲。左図は、名古屋大学 4 m 電波望遠鏡でとらえた一酸化炭素分子の同位体 13C16O から放射された電波110 GHzの強度を疑似カラーで示したもの。青から黄色、白になるにつれ、電波が強くなっており、一酸化炭素分子の密度が高くなっていることをあらわしている。赤丸と黄色の丸は、ぞれぞれ、分子雲の高密度領域で形成された「原始星」と、原始星の中でもさらに進化過程が進み、恒星になろうとする直前で重力エネルギーを解放しながら輝いている「 T タウリ型星」の位置を示している。右図は、おうし座分子雲の中の一部を拡大した電波強度図 と、同じ領域を可視光でとらえた図 を示している。



図 4 約 1500 光年の距離にあるオリオン座分子雲。ここでは、大質量星も含め、星が活発に形成されており、それに伴う反射星雲、散開星雲 HII 領域も観測されている。左はオリオン座領域の可視光のイメージに、なんてん電波望遠鏡で観測された一酸化炭素分子から放射される電波 115 GHzの強度を疑似カラーで示したもの。赤から黄色、緑、青となるにつれ、電波強度が強くなっている様子を示す。右図は、すばる望遠鏡でとらえた近赤外線でみたオリオン大星雲の様子。

 

【河村晶子 名古屋大学(2006年11月)】