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  γ 線バースト、アフターグロウ
天文部 「宇宙γ線」より
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 γ 線で宇宙を観測すると天の川に沿ってぼんやりと光っており 銀河円盤からの広がった γ 線 )、所々に明るい点源 パルサーや超新星残骸、活動銀河からの γ 線 がある。また、 1 日にほぼ 1 回の割合で一瞬非常に明るく輝く点が現れる。この現象を γ 線バーストGRBという。この GRB の発生した位置に X 線から電波まで広い波長範囲のどこかの波長で時間的に減光する天体が見つかることがある。この GRB の対応天体をアフターグロウ残光という。



観測の歴史


  GRB の最初の発見は、核爆発実験を監視する Vela 衛星の観測データ中に太陽と地球の方向以外から来る γ 線イベントとして 1973 年に報告された。本格的な GRB の観測が γ 線観測衛星 CGRO に搭載された 20 keV 〜 数 MeV の γ 線を測定する GRB 検出器 BATSE によって行われた。 BATSE は 1991 年から 2000 年の間に約 2700 個の GRB を検出し、その発生場所が天球上で極めて等方的に分布していることを示した 図 1 )。アフターグロウは 1996 年打上げの X 線観測衛星 BeppoSAX によって GRB と同時に X 線で光る対応天体として発見された 図 2 )。

 

図 1 天球上におけるγ線バーストの発生位置。座標は銀経・銀緯
http://cossc.gsfc.nasa.gov/docs/cgro/cgro/batse_src.html

 

図 2 GRB のアフターグロウ( X 線)。発生から 6.5 時間後(左)、12.5 時間後(中)、54 時間後(右)
http://bepposax.gsfc.nasa.gov/bepposax/first/grb971214.html

 

  BeppoSAX は数分角の精度で X 線対応天体の位置を決められるため、他波長での観測により可視 図 3および電波でもアフターグロウが見つかった。可視残光天体の赤方偏移から GRB は宇宙論的遠方数十億光年の現象であることが確実となった。その後、 Hete2 衛星や Swift 衛星によって GRB の高精度位置情報が GRB 発生後数 10 秒以内に通報されるようになり、地上望遠鏡や宇宙望遠鏡による残光観測が盛んに行われている。

 

図 3 GRB のアフターグロウ(可視)
http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod//ap970422.html




GRB は何か


  GRB は、数秒から数十秒の間に 0.1 〜 1 MeV 付近の γ 線を爆発的に放出する宇宙論的遠方での天体現象で、その典型的な明るさは 10-5 erg/cm2、全放出エネルギーにすると 1052 〜 1054 erg である。 GRB には 2 秒を境に継続時間の違う 2 種類がある。短いもの平均 0.4 秒程度は γ 線のエネルギーが高く短い GRB )、中性子星またはブラックホールの連星の合体と予想されている。長いもの 平均 30 秒程度はエネルギーが低く長い GRB )、大質量星太陽質量の 30 倍以上の重力崩壊が起源と予想され、超新星との関連を示唆する観測もあるが、確たる証拠はない。現在までに残光や赤方偏移が観測され宇宙論的起源が確定したのはすべて長い GRB であり、短い GRB については残光すら観測されていない。爆発を引き起こす中心駆動天体の正体は明らかではないが、 GRB の大きな放出エネルギーと残光観測から GRB の放射機構はローレンツ因子 100 以上という超相対論的な運動をしている放射領域での内部衝撃波と考えられる。また、残光は相対論的な速度で飛び出した物質が周囲の星周物質や星間物質と衝突して生じる衝撃波で加速された電子のシンクロトロン放射である。形成された外部衝撃波は徐々に減速し、次第に減光すると同時に典型的放射波長が長くなっていく。これを火の玉モデルといい定量的に残光観測を説明できる。




GRB による超高赤方偏移宇宙の探索


 GRB は絶対光度が最も明るいクエーサーの約千倍にもなる宇宙で最も明るく輝く天体現象で、GRB からの光は途中の銀河間空間の物質と相互作用しながら地球に到達するため、そのスペクトルには GRB から地球までの間の物質分布についての情報が含まれる。そのため、超高赤方偏移宇宙の探索に重要な手段となる。最も遠方の GRB はすばる望遠鏡による分光観測により赤方偏移が 6.29 と決まった GRB050904 である距離 128 億光年 )。このスペクトルの詳細な解析から宇宙誕生後 9 億年で宇宙は既に再電離していることがわかった 図 4 )。このように GRB は初期宇宙の観測的研究にとっても重要な対象である。


【水本好彦 国立天文台光赤外研究部(2006年11月】

 


図 4 すばる望遠鏡による GRB 赤方偏移 ( z = 6.29 ) の決定
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~totani/GRB050904-pub/