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  宇宙の大規模構造、超銀河団、超空洞、壁
天文部 「超銀河団と宇宙の大規模構造」より
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理科年表 2019
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  宇宙に銀河は無数に存在する。そしてその分布のしかたは無秩序ではない。これまでの観測に基づいて、銀河系の周囲にある銀河の分布を示したのが図 1 である。この図の 1 点 1 点がすべて銀河であるが、銀河の密集した場所 赤いところや少ない場所青いところ )、あるいは銀河の全くない場所 黒いところが複雑に絡み合っていて、銀河が決して一様に分布しているのではなく、むしろ凸凹の激しい分布のしかたをしていることがわかるだろう。星が集まってできている銀河は銀河群あるいは銀河団と呼ばれる集団を作り、銀河群や銀河団はさらに 1 億光年の大きさに及ぶ「超銀河団」と呼ばれる集団を作っている。同様な大きさで銀河の全くない空間は「超空洞 ボイド」と呼ばれている。さらに超銀河団同士もフィラメント状やシート状に連なった銀河でつながっている。このように銀河をひとつの単位として宇宙を眺めると、小さなスケールから大きなスケールにいたるまで、どこでも「天体が群れ集まっている」という描像が得られる。図 1 のように宇宙を非常に大きなスケールで眺めると、おびただしい数の銀河がこの大きな宇宙の中で巨大なネットワークを形成していることがわかる。これが「宇宙の大規模構造」である。

 

図 1 宇宙の大規模構造。図中の各点は銀河を示す。扇形の中心にある銀河系からの距離に応じて、遠い銀河ほど扇形の外側に図示されている。図の上下にある黒い部分は未観測領域で観測データがないために示されていないが、実際にはこの領域にも宇宙の大規模構造が広がっていると考えられる。
( The 2dFGRS Image Gallery : http://www.mso.anu.edu.au/2dFGRS/ より転載 )

図 2 図 1 の中央付近、扇の要のあたりの左側の拡大図。 銀河の密集した場所は赤く、少ない場所は青く、全くない場所は黒く色づけされている。
( The 2dFGRS Image Gallery : http://www.mso.anu.edu.au/2dFGRS/ より転載 )

 宇宙の大規模構造は 1980 年代の中ごろに、ひとつひとつの銀河までの距離を正確に測定して宇宙の地図を作る、という非常に地道で根気の必要とされる観測によって発見された。この予想外の発見はより遠方宇宙への観測の契機となったと同時に、その後の SDSSスローン ・ デジタル ・ スカイ ・ サーベイ )、2dFGRS2平方度銀河赤方偏移サーベイといった大規模な広域銀河探査の足がかりともなった。これまでの観測から、われわれから少なくとも 80 億光年かなたにまで宇宙の大規模構造がつながっていることが確認され、また宇宙誕生からわずか 10 億年後に既に形成されつつある原始銀河団が見つかっている。 銀河は宇宙初期の小さな密度揺らぎが重力によって成長して形成されたと考えられている。銀河の群れ集まった大規模構造も、長い宇宙の歴史の中で重力がつくりあげた物質分布のパターンだと考えられる。宇宙の大規模構造を構成する銀河の群れぐあいの定量的な測定と、計算機を用いた数値シミュレーションの比較から、銀河をとりまく冷たい暗黒物質 ダークマターの存在が示唆されている。宇宙の質量のうち、水素やヘリウムなど我々のよく知っている物質 バリオンはわずか 15 %程度であり、残りは暗黒物質が占めている。暗黒物質は電磁波を出さないため直接目で見ることはできないが、銀河の運動や重力レンズ現象*1を通してその存在が確認されている。宇宙の大規模構造もこの暗黒物質が重力によって集積した様子を見ているとほぼ考えられる。宇宙初期の密度揺らぎの成長の様子 ( 図 3は暗黒物質の性質のみならず、宇宙膨張の様子、銀河形成の過程などに大きく関与している。約 137 億年前の小さな揺らぎから、現在の宇宙に見られるこの大規模構造がいつどのように形成されてきたのかを明らかにすることは、現代の天文学の大きな課題のひとつである。

【柏川伸成 国立天文台・総研大(2008年 5月)】

 

*1  重力レンズ現象 : 遠方の天体からの光が、観測者との間にある質量の大きな天体によって曲げられる現象。アインシュタインの一般相対性理論で予測されていた。

 

図 3 計算機シミュレーションによる宇宙の大規模構造の形成。宇宙初期に暗黒物質 青く見えるはほぼ一様に分布していた 図 3 上 )。やがて重力によって暗黒物質の密度分布のコントラストが強くなり、非常に密度の高いところでは銀河 白く見えるが生まれる図 3 中 )。さらに時間がたつと密度分布のコントラストはさらに強くなり大規模構造が形成される 図 3 下 )。この大規模構造の形成の様子は国立天文台 4 次元デジタル宇宙プロジェクト以下のサイト において動画で見ることができる。
( http://4d2u.nao.ac.jp/t/var/download/index.php?id=lssより転載