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 天文部 太陽ニュートリノ研究の新しい成果

理科年表 平成30年
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 太陽から来るニュートリノの観測が新しい局面を迎えた.太陽ニュートリノの観測は1970年代始め頃から,太陽内部の核融合反応を直接観測することを目的として始まった.しかし,観測した太陽ニュートリノの強度が,太陽標準モデルの計算から得られる値と比べて半分以下であることが分かり,その後30年余りの長い間「太陽ニュートリノ問題」として物理学者の頭を悩ませてきた.
 太陽ニュートリノ問題は当初からニュートリノ振動が原因であるとの考え方もあったが,太陽モデルや核融合反応の不定性,太陽ニュートリノ実験の系統誤差などによる可能性も考えられ,計算のさまざまなチェックや多くの太陽ニュートリノ観測実験が行われた.結局,太陽ニュートリノ問題は3種類のニュートリノが質量を持ち,混合していることに起因するニュートリノ振動現象が原因であることが最近はっきりした.
 太陽内の核融合反応 4p → 4He+e++νe+26.7MeVは,ppチェインと呼ばれる連鎖反応として起こっている.生成される太陽ニュートリノは電子ニュートリノである.日本の実験であるスーパーカミオカンデは,閾値が5MeVであるため,7Be+p → 8B+γ;8B → 8Be*+e+νe 反応からのいわゆる8B-ニュートリノのみを捉える.8B-ニュートリノの終端エネルギーは〜15MeVである.観測された流量は(2.35±0.02±0.08)×106cm−2s−1であり,太陽標準モデルから予測される流量の46.5%である.スーパーカミオカンデは,ニュートリノと電子の弾性散乱を検出するもので,電子ニュートリノとミュー(タウ)ニュートリノに感度がある.ただし,ミュー(タウ)ニュートリノの感度は,電子ニュートリノのおよそ15%である.
 カナダにSNOと呼ばれる重水を標的とした実験がある.この実験は,荷電反応 νe+d → e++n+nにより電子ニュートリノを,中性カレント反応νx+d → νx+n+p反応により3種類すべてのニュートリノを捕らえることができる.2001年,SNO実験の荷電反応によるνe流量(1.75±0.07±0.12)×106cm−2s−1と,スーパーカミオカンデの電子散乱(νe+νμ+ντ)の測定結果を比較することにより,電子ニュートリノ以外のニュートリノが65%含まれていることが実験的に判明し,太陽ニュートリノ問題がニュートリノ振動によるものであることが確立した.同時に,8B-ニュートリノの太陽での生成流量が5.44±0.99×106cm−2s−1であることが実験的に分かった.これは太陽標準モデルからの計算値5.05×106(1.00+0.20/−0.16)cm−2s−1と良く一致し,モデルで計算された結果がほぼ正しいことも明らかになった.
 太陽ニュートリノの振動現象は,原子炉からのニュートリノを100キロ以上の距離で測定することにより地上実験で確認できる.2002年12月に,原子炉からのニュートリノが飛行中に減少していることを日本のKamLAND実験が発表し,太陽ニュートリノの振動のパラメータが,いわゆる,大混合角度解であるとされた.すべての実験から求まる振動パラメータの最丈値は,質量差が7.2×10−5eV2,混合角がtan2θ=0.44であるが,測定の誤差はまだ大きい(質量差で約25%程度,混合角で約60%程度の誤差がある).
 振動のパラメータが決まったことにより太陽で発生した電子ニュートリノが地球に到達するまでにどのぐらい変化するかが計算できる.最丈値をとると1MeVより低いエネルギーの電子ニュートリノは,約30%がミューまたはタウニュートリノに変化し約60%に減衰,10MeV以上の電子ニュートリノは約30%に減衰する.
 これで観測量から逆に発生量を求めることができるようになった.太陽をニュートリノで観測する当初の出発点にようやく立ち戻ることができたのだ.

【 鈴木洋一郎 】