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 天文部 X線天文衛星「すざく」

理科年表 2019
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 日本で5機目になるX線天文衛星「すざく」は,2005年7月10日打ち上げられた.この衛星には,X線望遠鏡4台とその焦点面に,軟X線で感度と分解能の良いCCDカメラを置いている.また,300keVまで,広い帯域を高感度でカバーする,硬X線検出器が搭載されている.「すざく」チームによる初期の観測に続き,世界中から公募した提案に基づく観測に進み,打上げからの2年間に700個を越える天体を観測してきた.その観測により拓かれてきた,新しい宇宙の姿について,いくつかのトピックスを紹介する.

1)超新星残骸/惑星状星雲:星の進化の最期に,強い星風で作られる惑星状星雲や,超新星爆発の残骸には,数百万度にものぼる高温プラズマが作られる.そこからの低エネルギーの特性X線を,高い分解能で分光することで,炭素,窒素,酸素などの元素組成比を,初めて詳しく決めることができた.元になる天体が,どんな元素合成の歴史をもっていたかを,生成物の元素分析で明らかにできた.一方,粒子が高エネルギーに加速されている証拠である非熱的成分が,10keV以上で初めて,超新星残骸から確認された.

2)銀河系の中心:「すざく」は鉄のK殻の特性X線付近で高い感度とエネルギー分解能をもつ.その結果,銀河系中心の鉄K-X線を超高温プラズマ起源と,ブラックホールに照らされた反射起源とに分離した.そして,銀河中心近くで次々と起きた超新星爆発の証拠も見つかってきた.さらに「いて座 B」からの反射X線強度とその変動から,銀河中心ブラックホールは300年ほど前には,活動的銀河核並みにX線で明るかったこと,そのX線の強度が減少しながら,分子雲上を通過して行く様が見えてきた.

3)活動的銀河核:多くの銀河中心核に潜む大質量ブラックホールから強いX線が観測される.ブラックホール近傍からの鉄輝線には,高速の軌道運動,強い重力による影響を読み取ることができる.「あすか」衛星で得た,この手がかりは「すざく」の高感度観測から,確実なものになってきた.さらにはブラックホールの自転を決められる可能性も出てきた.

4)銀河団:高温ガスのX線観測から,暗黒物質の分布を得るとともに,銀河団の外縁部の高温ガスの温度を決めたり,銀河団周辺の物質の広がりを探っている.また,高温ガスが銀河団内で動く運動速度についても厳しい上限を得た.銀河団においても,超新星残骸同様,10keV以上で顕著な非熱的な成分の探索も進められている.

【 国枝秀世 】
<参考文献:日本天文学会欧文報告,59巻,すざく特集号(2007)>