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 生物部 感染症

理科年表 2019
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 人類の長い歴史の中で感染症は人類が安全で健やかな生活を送ることへの常なる脅威であった.衛生環境や栄養状況の改善,抗生物質やワクチンの開発普及が進み,感染症は基本的にはコントロール可能な疾患と考えられるようになった.とくに人類にとって歴史的にも最大の脅威と考えられていた天然痘について,その原因ウイルスを地球上から完全に駆逐し疾患そのものを撲滅することに成功したことは人類と病原体との戦いのなかで特筆すべきことであった.天然痘という疾患の特質と,優れたワクチンの存在,国際協力,といった好条件がそろったゆえんであるが,1970年代の後半から1980年代冒頭には,人々は感染症のコントロールにおおきな自信をもつに至った.
  しかしそのころから,全く新しい感染症が続々と出現した(新興感染症を参照).これらの多くの病原体は動物由来であり,いままで世界のごく一部に限局して存在していた感染症が交通手段の発達や,森林伐採,都市化によってそれに暴露されていないヒト集団へ一気に感染が拡大する可能性をひらいた.文明は必ずしも感染症を制圧しないのである.また昨今のわが国の状況では優れたワクチンが存在していても,必ずしも適切とはいえない免疫計画で個々のレベルでの十分な免疫が得られず,成人になっての流行が阻止できない麻疹(はしか),百日咳の例もある.
  感染症にかかわる分子生物学,分子免疫学の著しい発展で,新しい技術が駆使されて人々は格段の知識を得たが感染症の病原体についての知識はごく一部であり,その病原性,病態についても完全に解明されているのはほとんどない.そして感染症への対応は(1)病原体の実体についての性質を知ること,(2)病原体と細胞とのかかわりを知ること,(3)病原体と組織とのかかわりを知ること,(4)病原体と宿主とのかかわりを知ること,そして(5)それぞれ変貌する病原体の社会と宿主の社会とのかかわりを知ることが対応策を講ずる根本である.

【 常田佐久 】

世界における新興感染症の発生例
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新興ウイルス感染症
1. ウイルス性出血熱
 1967 マールブルグ出血熱
 1969 ラッサ熱
 1976 エボラ出血熱
 (1945, 1956 クリミア・コンゴ出血熱)
2. ウイルス性肝炎
 1969 B型肝炎 1973 A型肝炎
 1990 E型肝炎 1989 C型肝炎
3. ヒトレトロウイルス病
 1980 成人T細胞白血病(HTLV-1)
 1983 ヒト後天性免疫不全症(HIV-1)
4. その他
 ○1978 腎症候性出血熱
 1993 ハンタウイルス肺症候群
 ○南米出血熱
 1991 ベネズエラ出血熱
 1994 ブラジル出血熱
 ○ウイルス性下痢症
 1973 ロタ
 1982 Norwalk virus(ノロウイルス)
 ○1983, 1994 ヘルペスウイルス疾患
 ○1983 ヒトパルボウイルス感染症
 ○1998 ニパウイルス感染症
 ○2003 SARS
 ○1997, 2003 高病原性鳥インフルエンザ
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新興細菌感染症
 1961 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
 1965 肺炎クラミジア
 1967 ペニシリン耐性肺炎球菌
 1976 レジオネラ症(肺炎)
 1982 腸管出血性大腸菌O157
 1982 ライム病
 1983 ピロリ菌(胃潰瘍)
 1985 VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
 1992 新型コレラ菌O139
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新興リケッチア感染症
 1992 日本紅斑熱
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新興寄生虫感染症
 1976 クリプトスポリジウム
 1986 サイクロスポーラ
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日本で発生している新興感染症
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O157 1996年に西日本で世界に例を見ない大流行
現在も毎年3000〜4000名程度が感染
ノロウイルス 二枚貝の生食等で感染(ヒト-ヒト感染もある)
わが国の主たるウイルス胃腸炎の原因

HIV 8割が国内感染で,若年層の患者増加が顕著
国内に危機感が薄く,患者増加が強く懸念
E型肝炎 従来輸入感染症と考えられていたが,国内の野生シカ肉,豚肉等の生食で感染することもある トリインフルエンザ(H5N1) 国内養鶏場での発生に際し,対応従事者が感染(幸い無症状)MRSA 通常無症状だが,医療現場で高齢者等の易感染者に問題新型ヤコブ病 一例の発生で大きな社会不安をきたす
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