トップ 徹底解説 理科年表FAQ 理科年表広場 理科年表プレミアム 質問箱
理科年表とは 特集 読む ラインナップ バックナンバー よくある質問 検索 ヘルプ
トップ  > バックナンバー > 平成21年 > トピックス > 生物部 システムバイオロジー:生物をシステムとして理解する
 生物部 システムバイオロジー:生物をシステムとして理解する

理科年表 平成30年
大正14年創刊以来の伝統・歴史とともに、記述の正確性にも定評がある科学データブックの最新版です。理科年表オフィシャルサイト探索のお供に、ぜひともご活用ください。また、本書のご購入により、オフィシャルサイト内「理科年表広場」へのアクセスが無料となります。
☆ハンディタイプの「ポケット版」と、大きな活字の「机上版」の2種類がございます。(内容は同一です。)
◆ポケット版
A6判 
定価1,400円+税
◆机上版
A5判 
定価2,800円+税
詳細はこちら

 システムバイオロジーは,生物をシステムとして理解する研究分野である.生物学的現象は,それを担う多くの分子の相互作用やそれらの相互作用の場を提供する物理的構造(これも分子相互作用によって形成される)などによって生み出される.ゲノム科学の発展によって,遺伝情報(ゲノム)や環境の影響がゲノムの読み取りに影響するエピゲノムなどを理解することで,どのような分子がかかわってくるかを網羅的に同定することが可能となってきた.これは,基本的に部品中心の理解であり,生命現象を理解するためには,さらに,部品同士のつながり方や一連の部品が一体となってどのような動作をするのか,その背後にある設計原理は何なのかを理解する必要がある.システムバイオロジーとは,「ものの理解」のうえに「ことの理解」を展開する学問である.
 システムを理解するためには,ゲノムレベルでの網羅的アプローチをとる場合や,特定の部分に着目してそのサブシステムを詳細に研究する場合もある.各々のアプローチは,生命システムの何を理解したいのかによって変わってくる.例えば,すべてのタンパク質同士の相互作用の網羅的測定を行って,ある生物の分子間相互作用の全体的傾向からその背後にある原理を解明しようという研究がある.逆に,大腸菌の走化性にかかわる数種類の分子からなるネットワークの設計原理を,精密な実験と数理モデルで理解しようという研究もある.アプローチは大きく違うが,どちらも,個々の部品を調べても理解できないシステムレベル固有の現象を理解しようとする研究である.
 このような理解が進むことで,多くの病気にさらに効果的な薬の開発や,微生物を改変しバイオ燃料や薬を生産させるバイオテクノロジーの応用などが,飛躍的に進んでいくことが期待されている.すでに,欧米の大手製薬企業は,システムバイオロジーを創薬のプロセスに導入し始めている.また,米国エネルギー省(DOE)は,「エネルギーと環境のためのシステムバイオロジー」という大きな研究プロジェクトを発足させ,バイオ燃料などの開発を進めている.また,ハーバード大学が,システムバイオロジー学部を設立するなど,欧米では,システムバイオロジーが多くの研究機関・教育機関の重要なテーマになっている.欧州と米国が,巨額の研究資金を投入していることから,今後さらに研究とその応用が加速されると考えられる.

【 北野宏明 】