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 暦部 理科年表に採用される経緯度について

理科年表 平成30年
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 大正14年(1925)の創刊以来,理科年表暦部では一貫して旧東京天文台大子午儀跡を東京の経緯度の基準点としてきた.しかし,世界測地系への移行手順に問題があり,平成15年(2003)版から平成21年(2009)版まで掲載していた東京の経緯度の値は適切とはいえないことが判明した.本稿ではこの報告をするとともに,その他の経緯度についてもまとめてみたい.
 旧東京天文台にはさまざまな経緯度基準点が存在していたが1,ここでは大子午儀と子午環中心(現在の日本経緯度原点)に絞り,かつ議論に必要な結果についてのみ触れることにする(下表).
 まず,経度については,大正7年(1918)9月19日文部省告示號外により大子午儀の経度が定められ,子午環中心の経度もそれに合うように変更されている.
 一方,緯度については,大子午儀が明治25年(1892)に東京天文台で測定した成果によるのに対し,子午環中心は明治9年(1876)の測定成果を基にしている.本来大子午儀は子午環の東10mほどの場所にあり,両者の緯度はほぼ同じはずなのだが,基にした成果が違うために見かけ上1″を超える差異(約40m)ができてしまったのである.日本測地系の基準は子午環中心であるから,これは大子午儀の緯度が日本測地系に準拠しない独自の天文経緯度であったことを意味する.



世界測地系への移行はこの差を吸収できるチャンスであった.しかし,残念ながら,大子午儀の経緯度を日本測地系の値とみなし,単純に世界測地系の経緯度に変換してしまったため,この見かけ上の緯度差が保存されることになってしまったのである.
 以上の経緯をふまえ,また,GPSなど宇宙測地技術の進展によって天文経緯度の基準点という概念はすでにその役割を終えており,すぐ近くに経緯度原点という申し分のない基準点があることから,平成22年(2010)版からは東京の経緯度として日本経緯度原点の値を採用することとした.幸い,両者の経緯度の違いはわずかであるため,四捨五入の関係で太陽の南中時刻や北極星の高度に若干の影響が出る点を除いて表値にほとんど違いは現れない.日食や月食の予報地点も同様の問題を抱えているが,これらの地点には近くに適当な基準点がないケースもあるため,平成22年版では修正を加えず平成23年(2011)版からは「各地の日出入」で使われている値を採用することとした.
 最後に,「各地の日出入」で使われている経緯度についてもまとめておこう.ここで使われている経緯度は大正10年(1921)の本暦に掲載された値が基になっている.明確な資料は残っていないが,おもに当時の道府県庁所在地の経緯度(日本測地系の値)を′単位で丸めたもののようである.
 理科年表への掲載は昭和25年(1950)版からで,地理的な距離も考慮してか北海道は根室・札幌・函館の3ヵ所が記載されている一方,まったく記載のない県も存在していた.昭和29年(1954)版からはほぼ全県に拡張され,昭和47年(1972)版から沖縄が,翌昭和48年(1973)版から小笠原が追加,昭和52年(1977)版から八丈島と函館が削除されている.
 その間に庁舎の移転や世界測地系への移行も経ているが,′単位の経緯度を変更する意味はあまりないので,今後もその値を用いる予定である2
*2017年11月追記:現在もこの値を用いている.

【片山真人】

1)「佐藤友三,天文月報第36巻,p.69他(1943).http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1943/index.htm」や「相馬充,理科年表Q&A,p.10(2003)」などに詳しくまとめられているので参照されたい.
2)平成15年版から平成19年版まで根室の緯度を43°19′としていたが,平成20年版からは再び元の43°20′に戻している.