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 天文部 すばる望遠鏡10年の成果

理科年表 2019
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 1999年に始動した光学赤外線望遠鏡すばるは,過去10年の間に,特長である広視野撮像能力や高解像力,多彩な装置群を生かして天文学のさまざまな分野で成果をあげてきた.

初期宇宙における銀河形成
 赤方偏移7の最遠方銀河の発見をはじめ,遠方銀河の探査において,すばる望遠鏡は圧倒的な力を発揮してきた.これにより,赤方偏移6〜7(宇宙誕生から8〜10億年)において銀河の個数密度の減少の兆候がとらえられ,この時期にはまだ銀河形成が進んでいないか,宇宙再電離が完了していない可能性が示された.ガンマ線バーストGRB050904の残光の分光観測から,その赤方偏移が6.3であることを決定するとともに,ガンマ線バースト残光を用いて宇宙再電離に有意義な制限を与えることに初めて成功した.

宇宙大規模構造の形成と進化
 宇宙誕生から10億年ほどの初期に,すでに宇宙大規模構造の形成が始まっており,銀河団の種も形成されていることを明らかにした.その後100億年にわたるさまざまな時代に,銀河や暗黒物質がおりなす大規模構造を描き出し,銀河が集合し銀河団が成長していく様子をとらえた.ハッブル望遠鏡などとの共同で,宇宙の大規模構造をつくる暗黒物質の空間分布を初めて観測的に明らかにし,暗黒物質がつくる大規模構造のなかで銀河の形成・進化が進むというシナリオを検証した.

銀河形態の進化
 補償光学を用いた近赤外線観測により,これまで観測が難しかった赤方偏移3における銀河の形態を多数測定することに成功し,この時期には円盤銀河が多く,楕円銀河がほとんど見られないことを明らかにした.一方,銀河団内とその周辺領域では銀河の合体などによって楕円銀河の形成が進んでいることが実証された.

超新星とガンマ線バースト
 ガンマ線バースト後に同位置に出現した超新星の分光観測により,継続時間の長いバーストの起源が爆発エネルギーの高いIc型超新星であることを明らかにすることに貢献した.また,多数の超新星の分光観測により,極超新星だけでなく,超新星一般に非球対称性がみられることを明らかにした.銀河系内の過去の超新星からの光が周囲の物質で反射される現象(光エコー)の分光観測に成功し,過去の超新星の性質を現代の観測技術で解明する手法を確立した.

宇宙の初期世代星
 銀河系内に生き残る年齢の高い星の観測により,これまでに知られているなかで重元素組成の最も少ない星を発見し,宇宙の初代星による元素合成の特徴を導き出した.初期世代星の重元素組成を系統的に測定し,鉄より重い元素の合成過程のモデルの検証に貢献した.

惑星系形成
 太陽よりずっと軽い星から重い星にいたるまで,補償光学を用いた近赤外線観測により原始惑星系円盤の形状を調べ,円盤が多様な構造を持つことを明らかにした.惑星系形成の途上にある星の中間赤外線による観測から,星の周囲に存在する微粒子(ダスト)の分布を描き出し,微粒子の起源となる微惑星の存在をつきとめた.太陽型星のまわりに惑星系を探す観測では,巨大コアをもつ特異な惑星をはじめ,惑星系の多様性を解明することに貢献した.

太陽系天体
 彗星の分子のスピン温度の測定により,太陽系初期における彗星の形成場所を特定することに成功した.2005年のテンペル第一彗星へのNASA探査機の衝突実験(ディープインパクト)後に彗星から放出された物質を中間赤外線で観測することにより,彗星の内部物質の組成を測定した.小惑星のサイズ分布を,従来より小さなものについて精度よく決定し,月クレーターのサイズ分布との関連性を明らかにした.

【青木和光】