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 天文部 太陽系外惑星の直接観測

理科年表 2019
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 1995年の,ペガスス座 51番星を周回する木星型惑星の発見以来,系外惑星の観測は最も重要な天文学のテーマのひとつとなった.太陽系内の 8個の惑星に対し,すでに 450個を超える多様な系外惑星(正確には,候補も含まれる)が発見されている.そのような中で 2008〜2009年は,系外惑星の次のマイルストーンと考えられていた直接観測に成功した年となった.本稿では,その前夜から現在までを紹介する.
  最初に系外惑星検出に成功したドップラー法(動径速度法)以外にも,トランジット法,重力マイクロレンズ法といった間接的方法(「太陽系外惑星系」参照)が次々と成功してきたが,系外惑星の直接観測は,2000年頃からの本格的な試みにもかかわらず成功していなかった.その理由は,直接観測は,高解像度・高感度・高コントラストの 3者を同時に実現した撮像を行うため,大口径地上望遠鏡において大気の揺らぎを補正する補償光学あるいはスペース望遠鏡を利用し,さらに,高コントラストを実現するための特別な工夫が必要になるからである.
  しかし,間接法は惑星からの光を直接検出するわけではないため,いろいろな不定性がある.また,ドップラー法やトランジット法ではごく内側の系外惑星検出にバイアスがかかり,かつ,主星の活動性の高い若い恒星には適用できない.いっぽう直接観測では,若い恒星を周回する若い惑星や外側領域にある長周期の惑星に迫ることができる.
  直接観測の成功の報告の第一弾の波は 2004年〜2005年に訪れた.VLTで,褐色矮星 2M1207の周りに約 3 木星質量の惑星質量天体が発見されたのを皮切りに,VLTとすばる望遠鏡の CIAOを用いて発見された,Tタウリ型星 GQ Lupを周回する約 17 木星質量天体,すばる望遠鏡による Tタウリ型星 DH Tau を周回する約 10 質量天体などがある(質量導出の方法が各論文で異なるため,ここでは主星年齢と伴星光度から同じ進化理論に基づいて計算し直してある).これらは,惑星の直接撮像に肉薄するものであったが,主星が褐色矮星のため伴星との質量比が小さい,あるいは,主星からの距離が 100 天文単位(AU)以上と遠く,どちらも原始惑星系円盤で生まれたものとは考えにくい.そのため,広く惑星と認められるに至らなかった.
  そのような中で,ついに直接観測に成功したと呼べる結果が出てきた.2008年 11月には,カナダ・アメリカのチームが A型星 HR8799の周りに,いっぽう,アメリカのチームは A型星フォーマルハウトを周回する約 10 木星質量以下の天体の直接撮像に成功した(ハッブル,ケック,ジェミニ望遠鏡).とくに,HR8799の 3惑星(HR8799b, c, d)は,一度に 3個もの惑星の撮像とその軌道運動を確認したものである.後者は,赤外線で検出されていないことから,原始惑星の星周構造が散乱光で検出された可能性が指摘されている.ただし,どちらも A型星のまわりの惑星(候補)である.他にも,有名ながか座ベータ星(A型星)から 8AUの距離に 8 木星質量の惑星候補が報告されていたが,2010年 6月に予想通りの軌道運動が確認された.ちなみに,HR8799bは円盤探査のためにすばる望遠鏡で 2002年に撮像された画像でも確認された.2009年 8月には,すばる望遠鏡において,ほぼ太陽と同じスペクトル型である G型星 GJ758の周りに約 10 木星質量の惑星候補が発見された.見かけの距離は約 30AU(地球と海王星の距離).背景星でないことが確認されているが,軌道は決まっていない.
  これらの発見は,「百聞は一見にしかず」という系外惑星直接観測の時代の幕開けを飾るものであり,今後は分光観測による特徴づけが重要となるだろう. 

【田村元秀】


*:主星の年齢と惑星の明るさから求めた推定質量.
**:力学的安定性から求めた質量.