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 天文部 太陽黒点活動は低迷期か?

理科年表 平成30年
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 最近(2010年当時),太陽黒点数が少ないことに関心が集まっている.太陽の顕著な活動現象は黒点領域に伴っており,太陽総放射量も黒点数に依存している.このため,太陽活動現象の低下が地球に与える影響,とくに気候変動への影響など,黒点数は太陽現象に留まらず,地球環境からも関心が高い.太陽黒点数が約 11年の周期で増減を繰り返すことはよく知られているが,今回の太陽黒点数極小期は最近の中では異常に長く続いた.黒点数の短期的な変動が大きいため,極大,極小は月平均数のさらに 12ヵ月移動平均を取って決められており,これによると,2008年 12月が直近の極小月となり,現在,周期 24が始まっている.
  今極小期の異常さは,いろいろな現象で認められているが,最もわかりやすいものは,無黒点日数(黒点が見えなかった日の累積日数)であろう.表に最近 100年の,無黒点日数,極小値,極大値,それぞれの年月,黒点数周期の長さ(極小から次の極小までの長さ)を示す(相対黒点数およびその長期的な変動については理科年表オフィシャルサイトの徹底解説を参照のこと).この表の相対黒点数極小値,累積無黒点日数から,1900年初頭の極小期に近い約 100年ぶりの極小規模になっていることがわかる.
  理科年表(天26)にある相対黒点数の周期図からもわかるように,むしろ最近 50年が異常に黒点数が多い時期になっており,今極小期の黒点数の少なさが際立って見えることにもなったが,100年以上の長い年月で見ればとくに異常というわけでもないことがわかる.
  多くの関心は今後の黒点数の推移であろうが(とくに,このままマウンダー極小期(1645-1715年)のように黒点数の極端に少ない状態が長期に渡り続くかどうか),太陽・恒星研究はこのような将来予測ができる段階に至っていない.黒点のもとになる強い磁場は太陽内部の自転運動や南北方向の循環運動によるダイナモ機構により成長衰退を繰り返していると考えられるが,黒点数の長期変動からわかるようにこれらは単純な周期過程ではない.また,日震学の進展で内部の大気運動が大分見えるようになってきたが,ダイナモ機構に適用する情報としてはまだ不足しており,理論モデルも不定性が大きい状態である.
  ただし,経験則として,直近の極大についてはある程度の予測ができる.とくに,極小から 2,3年経ち黒点数上昇の変曲点を過ぎると,極大値およびその時期についての予測精度は高いものになる.経験則としては,極小値(極小期前後の 3年平均値がより相関が良く,表にも示している)とつぎの極大値,周期長とつぎの極大値によい相関(逆相関)があることが知られている.また,50年ほど前から始まった磁場観測から,まだデータ数は少ないが極小期の太陽極域磁場の強さとつぎの極大値とに非常に良い相関があることがわかる.中でも,地磁気活動度指数( aa(antipodal average)指数)の極小値とつぎの黒点数極大値との相関はよく予測に用いられている.極小値が確定した現在,現 24周期の相対黒点数極大値については,70±20というのが経験則による大方の予想である.周期 23の長さが 12.6年とかなり長いこと,相対黒点数極小値が異常に小さい,極域磁場の強さが弱い,地磁気活動度指数が小さいなど,いずれも今期極大値の低さを示唆している.極小以降の黒点数上昇の傾向から,極大時期は 2013年の半ばになりそうである.
  上に述べたように今周期より先のことについてはっきりいえる段階ではないが,黒点数には 80-120年の周期が見られること,過去に,周期が伸びて黒点数が極端に落ち込むと, 3周期ほどは黒点数の少ない周期が続くこと(現在は,天26 黒点周期の 1800年頃,1880年頃に対応すると予想)から,周期 24が予想通り黒点数の少ない周期であると,周期 25,26も同様に少ないことが予想される.前 23周期の長期化と極小期の極端な黒点数低下等は,太陽黒点活動が低迷期に入った可能性が高いことを示唆しており,太陽・恒星周期活動の機構解明のためにも今後とも黒点数変動と関連事象に注目する必要がある.

【末松芳法】


(*)は2010年6月までの累積日数