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 生物部 ウナギの完全養殖に成功

理科年表 2019
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 ウナギの養殖は盛んに行われているが,現在のウナギ養殖は卵から育てるのではなく,天然の稚魚(一般にシラスウナギと呼ばれているもの)を捕らえて育てる方式である.それに対して,「完全養殖」は人工ふ化したウナギの雌雄を親にまで育て,それらを成熟させて卵と精子を採り,授精させて次世代のウナギの子供をふ化させることであり,このサイクルを継続できれば理論的には天然の稚魚を捕獲しなくても養殖が半永久的に可能となる.
 ウナギの人工ふ化の研究はわが国では 1960年代に始められ、1973年に北海道大学が世界初の人工ふ化に成功した.しかし,人工ふ化したウナギの仔魚(プレレプトセファルス:全長約 3mm)を養殖に使えるシラスウナギ(約 5cm)にまで育てる技術の開発は困難を極め,独立行政法人水産総合研究センターにおいて 2002年に世界で初めて稚魚まで育てることに成功するまでおよそ 30年の歳月を要した.その後,人工ふ化ウナギを親にまで育てる取り組みが続けられ,2009年末に雌雄のウナギが成熟可能な段階まで育っていることが確認できた.2010年初めから,完全養殖実現に向けて親ウナギに成熟を促進するホルモンの投与が開始され,3月 26日以降,9個体の雌から合計 200万個以上の卵が得られて人工ふ化 2世代目の完全養殖ウナギが多数誕生した.
 完全養殖に成功したことによって天然資源に依存しないウナギの養殖が理論的には可能となったが,現在の技術では年間数百尾程度しか稚魚を生産できない.実際の養殖に役立つためには稚魚を大量生産する技術の開発が必要である.大量生産が可能となって養殖用の稚魚の一部を完全養殖ウナギでまかなうことができれば,天然のウナギ資源の保護に役立つとともに,天然稚魚の捕獲量に依存していた養殖用の稚魚の供給を安定化することが可能となる.さらに,完全養殖ウナギが飼育下で世代を重ねることによって,これまでより育てやすく,おいしい養殖ウナギが創り出されることも期待される.

【田中 秀樹】