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 宇宙放射線

理科年表 2019
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 宇宙放射線は、銀河宇宙線、太陽粒子線、補足粒子線に 3 分類される。銀河宇宙線は非常に大きいエネルギーが特徴である。10 GeV 以上の高エネルギー粒子成分は 90 % が陽子、 10 % 弱が α線、 1 % 程度が重粒子である。太陽粒子線は、ほとんどが陽子と電子で数%の α線と微量の重粒子である。太陽は 11 年周期で活動しており、太陽表面の爆発太陽フレアによって銀河宇宙線とは比較にならない程の大量の高エネルギー線を放出している。補足粒子線とは太陽粒子線などが地磁気の磁力線に捕捉されたものである。赤道上空を土星の環のように地球を取り囲み、平均高度が約 3600 km の陽子帯内帯と約 18000 km の電子帯 外帯の 2 層の放射能ベルトバンアレン帯 がある。内帯の一部は南大西洋の上空に垂れ下がり、これを SAASouth Atlantic Anomalyという。宇宙放射線に含まれる高 LETlinear energy transfer ; 線エネルギー付与 放射線の重粒子線は、細胞死 ・ 突然変異 ・ 染色体異常誘発などで X線、電子線や陽子線の低 LET 放射線に比べ生物影響を表わす RBErelative biological effectiveness ; 相対的生物効果比が高い。放射線防護では、過去の RBE のデータの最大値に近い値を線質係数 Q値として定め、吸収線量( Gyとの積の線量当量( Svという概念が用いられている。 宇宙放射線量は地表からの高度とともに大気層が無くなり、荷電粒子を散乱させる地磁気が弱くなるため、急激に増加する。高度約 400 km、軌道傾斜角 51.6 度で飛行する宇宙ステーションでの被曝線量の内訳は、 SAA の下端を通過する際で、低 LET 放射線 γ線や高エネルギー陽子など )と、高 LET 放射線( α線、重粒子線、中性子線などが半々である。ステーションの内部では、地表の約 1000 倍に相当する約 1 mSv/day と概算されている。一般に、約 1 mGy/min 以下は低線量率なので、宇宙は低線量率環境といえる。低 LET 放射線の場合、生物は同じ放射線量を一度に受けるよりも低線量率で長期に受けた方が生物影響の現れ方が低く、この現象を線量率効果という。一方、高 LET 放射線の中性子線はむしろ低線量率被曝の方が、生物影響が大きく、この現象を逆線量率効果という。実際高 LET 放射線 ・ 低線量率環境の宇宙ステーションに長期滞在した宇宙飛行士のリンパ球には、高頻度の染色体異常が見出されている。また、宇宙放射線が眼球や視神経を貫いたとき、多くの宇宙飛行士は目の中に白い火花が飛び散ることを経験しており、この現象をライトフラッシュという。また、微小重力環境が宇宙放射線の生物影響を増幅させる可能性が報告されている。安全な宇宙飛行をするためには、さまざまな粒子線種の宇宙放射線を上手に防護する必要がある。

 

【大西武雄 奈良県立医科大学(2008年 7月)】

 

宇宙放射線の特徴
低線量
90 日滞在でも約 100 mSv 以下。
低線量率
1 日あたり約 1 mSv ; 中性子線の逆線量率効果。
長期被爆
宇宙ステーションでは約 90 日滞在予定。1 回の最長滞在記録は 438 日。累積最長滞在記録は 748 日。
高 LET 放射線
α線、中性子線、Fe粒子線など。
微小重力との
相互作用
実際の重力は 10-3 〜 10-6 g である。